儚いから愛おしく、慈しむほど輝く

呼び捨てされる嬉しい響き Good Chance 期待しちゃうな

ヴィレッジ見ました

目覚めることについて。

め‐ざ・める【目覚める】 の解説
[動マ下一][文]めざ・む[マ下二]
1 眠りからさめる。目が覚める。「朝早くに―・める」

2 感情・知覚・本能など、ひそんでいたものが働きだす。「仕事への意欲に―・める」「性に―・める」

3 迷いが消え去って本心に立ち返る。「悪から―・める」「現実に―・める」
出典:デジタル大辞泉小学館

映画「ヴィレッジ」の冒頭と結びに登場するのは、「邯鄲」という能の演目の謡です。この演目は、「邯鄲の枕」で眠った青年が目覚めるところから話が大きく動き出します。眠りから覚めた彼は皇帝の位を譲り受けるのです。その後、満ち足りた人生を50年過ごすわけですが、ある日、酒に酔って眠りに落ち、再び目を覚めると、皇帝としての人生が消え去り、50年前に「邯鄲の枕」で寝た時と同じ、青年としての人生が再開されます……つまり、彼の楽しんでいた皇帝としての50年間は全て夢だったのです。

松崎健夫がパンフレット内でも指摘しているように、この作品では主人公・優の就寝カットが度々挿入されています。一人で眠る、美咲と眠る……その丸まった寝姿は、ある時には人生から逃げているように、またある時には人生を言祝ぐかのように見えるのですが、それ以上に印象的なのは、目覚めのシーンです。美咲から面をもらった優は自らの内面を外に出せるようなる……あるいは奥へ秘めるようになるのですが、その夜の眠りから覚めたのちに、彼の人生は大きく変わっていきます。村一番の嫌われ者から、村の救世主、「ヒーロー」へ。まるで「邯鄲」に登場する青年のように、彼は<目覚め>という転換点を以て新しい人生を送ることになります。

そして、作間の演じた恵一もまた、<目覚め>により、それまで人生に区切りをつけ、もう一人の自分として生きることを選択した人物だと思うのです。恵一はすったもんだの末に、憧れていた優に裏切られ、額から血をだらだら流す流血沙汰に巻き込まれてしまうわけですが(あーあーあーかわいそう……)その後の<目覚め>のシーンが印象的なのですよね。ぼんやりと、木偶の棒のようにして突っ立っていた恵一が、ぱっちりと目を開ける。眠たそうな瞼を押し上げる。その瞬間の表情が、それまでとは異なったものとして映っているのです。ピュアな恵一の見せるニュートラルさは残しつつも、彼自身の意志のようなものが含まれる瞳。自分の属する村への違和感、気付きがはっきりと宿った顔になっている。この表情は、後から追加したと様々な媒体で監督がお話ししているラストシーンへと繋がっていきます。

恵一が村を出ていくラストシーンは「唯一の希望」としての彼の姿が描かれているわけですが、これは絶望でもあるとわたしは思います。村への絶望。優への絶望。そして、再び同じことが繰り返される予感。輝かしい日々を送っていたにもかかわらず、夢から覚めて、父と同じ道を辿った優と同様に、恵一もまた姉と同じように再び村に戻ってくることがうかがえるのですよね。その一方で、やっぱり恵一の<目覚め>に期待したい思いもあり……恵一に当たる陽の光と、空っぽの村の対比がどことなく不気味で印象的なラストでした。この作品で描かれる<目覚め>は、単に眠りからさめることだけではなく、内なるものや気付き、あるいは別の自分が生まれ、蠢くといった意味も持ち合わせているのでしょうね。個人的に<目覚め>といえばギャルゲーの日付システムなんですけど(ギャルゲーは一日単位で話が進んでいくものが多い)ちょっとそれと似たものを感じました。

舞台挨拶も行った……ので、追々感想書けたら良いなあ。スクリーンの作間よりも舞台に立ってる作間の方が何倍も大人っぽくてびっくりした。家に帰ってひらいてのDVD見たら、そっちは想像以上に子どもで頭がぐらぐらしました……(もはやヴィレッジ関係なくてすみません)。