儚いから愛おしく、慈しむほど輝く

呼び捨てされる嬉しい響き Good Chance 期待しちゃうな

ひらいてのシナリオを手に入れたためにひらいて熱が再燃しております。

 ふと人の気配がして振り向くと、たとえが立っている。目が離せない。(中略)
愛「私、たとえ君のためなら両目を針で突けるけど。その代り失明したら、ずっとそばにいてね。これで美雪より私を好きになる?」
たとえ「……」
愛「ねえ」
たとえ「もういいよ」
愛「ならないでしょ? だから思い悩む必要なんてないよ」
 たとえ、両手をひらき、愛の頭を引き寄せる。窓から春を知らせる風。突風になり、激しく舞い上がる折り鶴の中、初めて二人の視線がぶつかる。
首藤凛「ひらいて」『’21年鑑代表シナリオ集』

ひらいては原作も映画版もどちらも良くて甲乙つけがたい。しかしながら、たとえと愛ちゃんの関係性が変わる、あるいはひらくシーンに関しては原作の方が好きです。「連れて行ってやる」という言葉、そして、愛ちゃんを受け入れるにあたって、葛藤や苦悩を飲み込むたとえの描写が印象的で、こちらをそのまま落とし込んだ映像も見てみたかったな、という気持ちがあります。が、脚本を読むと、映画版のこちらのシーンもやっぱり素敵だな、と改めて感じました。あの風は、春を知らせる風、だったのですね。季節が変わること。少女を脱し、他者を見つめる瞳を手に入れること。成長譚としてひらいてを読んだ際、愛ちゃんが幼さを捨てる場面にあたるのが、このシーンなのでしょう。シナリオを目で追いながら通して見たい……から、やるべきことをさっさと済ませます……