儚いから愛おしく、慈しむほど輝く

呼び捨てされる嬉しい響き Good Chance 期待しちゃうな

一度目覚めたこの気持ちを無視するなんて、もう無理だ。大気に張っている薄い膜を突き破って、私は外へ飛び出す。なにかを得るためじゃなくて、なにかを失うために。つけた先から足跡が消えてもいい、私の香りはどこにも残らなくていい、存在を消したい。死ぬのとは違う形で、息を吹きかけられたろうそくみたいに消えたい。
綿矢りさ『手のひらの京』