2022-08-29 ■ 日記 一度目覚めたこの気持ちを無視するなんて、もう無理だ。大気に張っている薄い膜を突き破って、私は外へ飛び出す。なにかを得るためじゃなくて、なにかを失うために。つけた先から足跡が消えてもいい、私の香りはどこにも残らなくていい、存在を消したい。死ぬのとは違う形で、息を吹きかけられたろうそくみたいに消えたい。 綿矢りさ『手のひらの京』