儚いから愛おしく、慈しむほど輝く

呼び捨てされる嬉しい響き Good Chance 期待しちゃうな

夏を振り返ってみる

浮所担最初の夏が終わろうとしている。

思えば、今年の夏はやたらと「特別な夏にしよう!!」みたいな空気が渦巻いていた。平成最後の夏だから、高校生活最後の夏だから、わたしの周りは大体それを理由にして「花火しようよ〜」とか「お祭り行こうよ〜」とか「彼氏作ろうよ〜」って言ってた。ていうかわたしもそれを理由にして友達と夏祭りに行った。そして人の多さに撃沈してすぐさまUターン。サンリオショップ行って地元で17アイス食べて帰った。なんとも「らしい」夏だな……

そんなわたしの平成最後の夏はある日突然16歳のかっこよくてかわいいアイドルの男の子が現れたことで始まった。何気ない母との会話。最寄りの隣駅のレストランの隅っこの席。6月という微妙な時期の休日の昼の賑やかな雰囲気の中で言われた「東京B少年浮所飛貴くんって知ってる?」っていう言葉がきっかけの担降り。あまりにも陳腐なストーリーだ。今時こんなのケータイ小説の中でも起こらんだろ…っていうくらい安っぽくて出来過ぎている。(たぶんジャニオタが主人公で担降りを題材にしたケータイ小説はこの世に存在しない)

とにかく顔がどんぴしゃだった。一目見ただけでかわいい!!好きな顔!!って思った。と思えば自由で無邪気な性格もツボだった。まだまだなダンスもにこにこの笑顔だけで好きになれた。でもそれ以上に、現役高校生とアイドルという二面性がたまらなくわたしの心を惹きつけた。この子が制服を着て電車に乗って学校に通ってるなんて信じられない。(飛貴くんと同じ教室で授業を受けている少年たちには是非とも前世でどんな徳を積んだのか教えて欲しい。)そして(真偽はどうであれ)飛貴くんを取り巻く附属生特有の空気とアイドルのきらきらがSNS上でぶつかってるところから目が離せなかった。自分がとんでもなく小さな箱庭の中でもがいているからこそ、教室と舞台という二つの世界を持つ飛貴くんのことが気になって仕方がなかった。好きなのかどうかは分からなかったけど、どうでもいい存在じゃないことだけは確かだった。どうでもよくなかったからチケットを集めてみた。

友達と入った1公演目。みなみなサマーの衣装を着た飛貴くんを見て「えっこの子現実世界にいたのか…」という気持ちになった。なんだこの生まれて初めてJUMPのコンサートに行って「山田くんって本当に生きてたんだね!!!???」って一緒に入った友達に泣きながら言う中学生の山田担みたな感想は…と自分でも突っ込みたい気持ちでいっぱいだけど本当にそう思ってしまったのだから仕方ない。とにもかくにもiPhoneSEの4インチの画面の中で笑っていた男の子は本当にこの世界で生きていたのだ。ずっとにこにこしていて、でもファンサをしてる時の表情は少し大人びてて柔らかで。バルコニーでスペースジャーニーを踊ってる時の瞳はこれ以上ないくらいに綺麗だった。どこを見つめてるのかもわからないくらい遠くをじっと見ている姿が印象的で、遂に見つけてしまったと思った。



8月22日。散々もうチケットは増やさない!って騒いでたくせに結局増やした。バカすぎる。でももっとバカすぎる出来事が起きた。

個人的サマステ最終日。文化祭準備や部活に明け暮れる生徒で賑わう学校でわたしは泣きそうだった。バスの時間を勘違いしていた、いつもの交通手段じゃどうやっても間に合わない、チケットを紙切れにする以外の選択肢がないということに気付いてしまったからだ。バスの時刻表すら読めないのかよ自分本当に何も出来ないじゃん…って絶望した。でも絶望しながらもとにかく走りまくった。バス停まで行ってそこにあったバスに取りあえず乗った。乗ったは良いが何回乗り換え検索をやり直してもわたしのiPhoneSEは「どんなに頑張っても間に合いません!!」という検索結果しか出してくれなかった。絶望。マジほんと自分バカすぎる。さいあく。これで出来ないことリストがまた一つ増えた、と思った。でもどうしても諦めきれなかった。好きだから。今日飛貴くんを見ないと絶対後悔すると思ったから。検索条件を変えて乗り換え検索をし直したらギリギリ間に合うルートが出てきたた。バカ高い交通費。その上どこか一つでも遅延したらTHEエンド。でも運が良ければ入れる。正直言ってこの手段を選ぶのはバカすぎる。バカすぎるけど、もうこれで行くしかないと思った。頭の中に行かないという選択肢はなかった。

うきしょひだかくんゆきの特急に飛び乗ったわたしは色んなことをぐるぐる考えていた。なんでわたしは汗だくになりながらたった一人のアイドルの男の子を一目見るためだけに特急に乗ってんだ?どうしてわたしはバスの時刻表の見方すら分かんないんだ?何でも良いけどこの特急EXシアターまで直通だったら良いのに。ていうかなんでスマホの充電器すら持ってないんだよ、あと20%しかないんだけど。やっぱり出来ないことが多すぎる。18歳になっても本質的には学校にいけないと一人で泣いていた小学生の頃と何にも変わっていないんだと改めて気付かされた。改めて気付かされた、けど。好きなアイドルがいる。その子を一目見たい。それだけで、たったそれだけのことでチケットを血眼で探して、どうにか譲ってくれる人を見つけて。どうやっても間に合わないと分かったから特急のチケットをその場で手に入れて飛び乗って。その行動が全て自分のものだとは信じられなかった。あの頃の自分と地下鉄への乗り換えのために駅をガンダしてる自分が地続きだとはどうしても信じられなかった。

結局わたしはあの日無事にEXシアターに入ることが出来た。(あとこれは全然関係ないんですがあの日の夜の飛貴くんちょっとだけ疲れてそうというか体調悪そうで心配だった…パンデミックジャニワを経験したグループのおたくだったので長期間公演+体調不良が未だに恐怖である)正直言って今でもわたしはあの時の自分の行動が信じられない。「浮所飛貴くんに会いたい!!」というそれだけで半泣きになりながら特急に飛び乗った人間が本当に自分なのかを3時間に1回くらいのペースで考える、が、半券が手元にあるのだからそういうことなのだろう。

クールだよねって言われることがたまにある。でもその度にわたしはえーーーーー嘘だろ!!!???って叫びたくなる。だってわたしうるさいし黙ってられないし感情的だし、どっちかって言ったら飛貴くんとか頭のねじが外れたときの那須くんとか、そっち系のタイプだと思うんだけどなあって思ったらそういう言動の話ではないらしい。物の捉え方とか価値観とか、そういうことを言ってるらしい。最初言われたときは「クールとかめっちゃかっこいいやん自己紹介欄に書いたろ!!」とか思ったけどそれに気づいてからはクールだねと言われる度ちょっと落ち込むようになった。ていうかそれはただのしゃかまとか陰キャとかって言うんだよ!!しかしそんなしゃかま陰キャが16歳のアイドルの男の子のために必死になってガンダしたのだから驚きだ。ほんと何やってんだよって感じだけど、こういう自分は好き、かもしれない。「自分が好き」と思わせてくれたのは他の誰でもない、飛貴くんのおかげだ。

アイドルの定義は人それぞれだけど、わたしにとってのアイドルは世界を最高に面白くしてくれる存在だ。この定義に当てはめたら飛貴くんはわたしにとっていちばんのアイドルだと思う。飛貴くんを見つけてから世界が超面白くなった。夏の初めは飛貴くんのことが好きなのかどうかわからなかったけど、今はもう完全に好きなんだと思う。EXシアターで「見つけてしまった」って思ったのは間違いじゃなかった、よね。たぶんこうやって、これからも一つずつ一つずつ答え合わせみたいに「間違いじゃなかったよね」って確認していくんだろうなあ。こんな夏になるなんて思ってもいなかったけど、だからこそとっても素敵な夏になったんだと思う。予測できることはあんまり面白くないからね。この夏が終わったらどうなるかはまだ分かんないけど(だって何の現場も発表されていない…帝劇なのかなあ)きっと秋になっても冬になっても飛貴くんのことが好きなままだと思う。これからもその気持ちを貫いてみたら面白い自分になってた、みたいなことが何回も起こったら良いなあ。